抹茶の栽培

抹茶の栽培

抹茶の栽培には特別な技術が必要で、通常の茶葉とは異なる方法で育てられます。抹茶の原料となるのは「碾茶(てんちゃ)」という茶葉で、この茶葉は特に丁寧に育てられます。以下に、抹茶の栽培の特徴と流れを説明します。

1. 覆い下(おおいした)栽培

抹茶の栽培で最も特徴的なのが「覆い下栽培」です。この方法では、茶葉を収穫する約20日前から、茶畑に覆いをかけて直射日光を遮ります。これにより、茶葉の成長をゆっくりと進め、以下のような効果を得ます。

  • 旨味の増加:日光を遮ることで、茶葉中のテアニン(旨味成分)が増え、抹茶のまろやかさが強まります。
  • 苦味の抑制:日光が少なくなると、茶葉内のカテキン(苦味成分)の生成が抑えられ、味が柔らかくなります。
  • 鮮やかな緑色:遮光することで、茶葉のクロロフィル(葉緑素)が増加し、抹茶特有の鮮やかな緑色が生まれます。
  • 覆い香:覆いをすることによって碾茶独特の芳香が生まれます。

覆いには、昔ながらのよしずを使う本簀覆(ほんずおおい)がありますが、現代では寒冷紗と呼ばれる黒いシートを用いることが多くなりました。

2. 手摘み

抹茶に使われる茶葉は、通常、丁寧に手摘みされます。特に上質な抹茶を作るためには、新芽の柔らかい部分のみが摘み取られます。手摘みは茶葉を傷つけず、品質の高い茶葉を選別できるため、機械摘みよりも優れた方法とされています。

3. 蒸し工程

摘み取った茶葉はすぐに蒸されます。蒸すことで、茶葉の酸化を防ぎ、鮮やかな緑色と風味を保持します。この工程は、抹茶のフレッシュな香りや味わいを守るために重要です。

4. 碾茶の乾燥

蒸された茶葉は、その後乾燥されます。通常の茶葉とは異なり、抹茶用の碾茶は揉む工程を経ず、ただ乾燥させるだけです。この工程で作られるのが「碾茶」と呼ばれる茶葉です。

5. 碾茶の粉砕

乾燥した碾茶は、茶臼を使って、ゆっくりと時間をかけて粉末状に挽かれます。これが私たちが知っている「抹茶」です。機械式の茶臼で挽く場合、1時間でわずか30〜40グラムしか作れないため、茶臼1台で年間の生産量はわずかに120kgほど。品質の良い手摘みの高級碾茶ほど挽きにくく、品質が落ちるほど挽ける量は増加します。

栽培地

抹茶の栽培は、主に日本国内の以下の地域で盛んです:

  • 京都(宇治茶):宇治は抹茶の発祥の地とされ、今でも高品質な抹茶の生産地として知られています。
  • 愛知(西尾):お菓子用としての抹茶栽培が盛んです。
  • 福岡(八女茶):八女地方も古くから抹茶の有名な産地です。
  • 鹿児島(知覧茶):鹿児島でも近年輸出用の抹茶が作られるようになりました。

抹茶栽培のポイント

  • 覆い下栽培で育てることにより、旨味成分が多く、色鮮やかな茶葉ができる。
  • 摘み取った茶葉はすぐに蒸して酸化を防ぎ、抹茶特有のフレッシュな風味を保つ。
  • 乾燥させた後の碾茶はしばらく寝かせて茶臼でゆっくり粉砕し、滑らかで香り高い抹茶を作る。

このように、抹茶の栽培は手間がかかるものの、特別な風味や色合いを生み出すためのこだわりが詰まっています。

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